首の痛みは、成人の10~20%に発症し、年齢を重ねるにつれて発症率も上昇します。原因は多岐に渡り、筋肉や骨、神経などの問題だけでなく、精神的なストレスでも症状が現れることがあります。また、事故や転倒などをきっかけに起こる方もいますが、普段の悪い姿勢など原因がはっきりしない方も多くいます。
頚椎症は、頚椎(首の骨)やその周囲の組織に加齢などによる変性(老化変化)が生じます。変形から神経を圧迫することで、痛みやしびれ、運動障害などの症状を引き起こすことがあります。特に中高年の方に多く見られますが、長時間のデスクワーク、タブレットやスマートフォンの使用によって若年層にも増加傾向にあります。
症状
頚椎症の症状は、障害される神経の部位によって異なります。
• 首や肩のこり、痛み
• 腕や手のしびれ、脱力感
• 物をつまんだり指先の細かい動作がしにくくなる(ボタンがかけづらい など)
• 歩行時のふらつき、足のもつれ
• 排尿・排便障害(重症の場合)
これらの症状がある場合、単なる肩こりではなく、神経の圧迫が原因である可能性があります。
原因
頚椎症は、加齢による椎間板の変性や骨棘(骨のとげ)の形成が主な原因です。その他にも以下のような要因が関与します。
- 頚椎の椎間板の変性(つぶれやすくなる)
- 頚椎の関節の変形
- 靭帯の肥厚
- 長期間の悪い姿勢(猫背、うつむき姿勢など)
治療
多くの場合は保存療法で対応しますが、排尿・排便障害などの日常生活に支障が出る神経症状がある時は手術療法を考慮します。
保存療法(手術以外の治療)
- 薬物療法:痛みやしびれを和らげるための鎮痛薬や神経の炎症を抑える薬を使用します。
- リハビリ:頚椎を支える筋肉を鍛える運動や、姿勢指導などを行います。
- 装具療法:頚椎カラー(首の固定具)で首への負担を軽減することがあります。
- 神経ブロック注射:強い痛みやしびれに対して一時的に神経を鎮静させます。
手術療法
症状が進行し、日常生活に支障をきたす場合や、保存療法で改善がみられない場合には、神経の圧迫を取り除く手術が検討されます。
予防と日常生活のポイント
- 長時間のうつむき姿勢を避ける(デスクワーク中の姿勢改善)
- タブレットやスマートフォンの使用時間を見直す
- 首や肩のストレッチを日常に取り入れる
- 適度な運動で首回りや体幹の筋力を保つ
頚椎症は早期に適切な対処を行うことで、症状の悪化を防ぎ、快適な生活を取り戻すことができます。「首や肩のこりがなかなか取れない」「手のしびれが続く」など、気になる症状がありましたら、整形外科を受診してください。