【漢方内科】担当医師:天井 周
「アトピー」という言葉には、元々「奇妙な」「なじみがない」という意味があるのですが、そこからも分かるように、アトピー性皮膚炎というのは、なかなか複雑な病気です。単なるアレルギーの病気ではなく、皮膚の構造にも弱さがあります。
小さいお子さんの場合は、食物アレルギーがある場合もありますが、食べ物の制限を厳密にしすぎると栄養失調になり、かえって皮膚が弱くなったり、炎症が起こりやすくなったりします。食物アレルギーがあって、食べるとすぐに反応が出るような場合は、その食べ物を避ける必要がありますが、そうでない場合はバランスの良い食事をすることが大事です。血液検査などからビタミンやミネラルの不足が血液検査などから指摘された場合には、サプリメントで補うことも必要になってきます。
「これまでステロイドを使っても良くならなかった」「ステロイドでかえってひどくなった」「ステロイドが怖い」等の理由からステロイドを避けたいと思っていらっしゃるかもしれません。しかし、炎症がひどく夜も眠れない、浸出液がひどくて普通の生活が送れない、という状態にまでなると、そのこと自体がストレスになり、かえって悪化させてしまいます。東洋医学的にも「眠れない」ことは腎の気(エネルギー)を消耗してしまいます。気が消耗すると、水や血も足りなくなったり巡りが悪くなったりして、回復を遅らせます。
「かゆみで眠れない、起きてしまう」という状態を、ステロイド外用剤や抗アレルギー剤を使うひとつの基準としましょう。いったん治まって眠れるようになってから、少しずつ使う頻度を減らしていきましょう。これらの薬だけを使って症状を抑えた場合は、その後減らしていく途中でぶり返すことも多いのですが、漢方薬を使いながら食事や生活の改善を同時に行うことで、良い状態を保つことができます。
スキンケアも大事です。まずは皮膚を清潔に保ちつつ、洗いすぎて皮脂を取り除き過ぎないよう気をつけましょう。そして、保湿もしっかりしてください。皮膚を掻いてもできるだけ傷ができないよう、爪はいつも短く切っておきましょう。
これまで皮膚の症状が悪化したとき、何らかのストレスが強くかかっていたのではないでしょうか。ストレスがかかっているな、と感じたら、早め早めにきちんと解消しましょう。日ごろから、軽い運動、音楽、香りなど、自分に合ったストレス解消法を見つけておくと良いでしょう。それでもうまく解消できないときには、漢方薬が役に立つかもしれません。漢方薬は、ステロイド外用剤や抗アレルギー剤のように、すぐに症状を抑えることはできませんが、心と体の状態を改善しながら皮膚の状態も良くしていきます。
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