症状
股関節は人体の中で最も大きい関節です。周辺の筋肉と連携して上半身を支え、立つ・歩く・走る・座るなどあらゆる動作に関連しています。股関節の機能が低下すると血行が滞り、老廃物がうまく排出されず冷えやむくみが起こりやすくなるだけでなく、代謝が落ちて、太りやすくやせにくい体になってしまいます。
股関節の機能障害により正しい姿勢を保てず、猫背になったり、肩こりや腰痛の原因になったりすることもあります。さらに、股関節の動く範囲が狭くなると、運動機能の低下やケガのリスクも上がってしまいます。
股関節の病気で最も患者数が多いのは「変形性股関節症」です。股関節の軟骨が徐々に減少することによって関節に炎症が起きて痛みが生じます。
主症状は大きく分けると「痛み」「機能障害」に分けられます。
痛み
痛みは変形性股関節症の主症状ですが、発症初期はほとんど痛みを感じません。しかし、徐々に軟骨が擦り減ってくると、股関節に痛みを感じるようになります。股関節が原因でも、股関節以外の膝や腰などが痛む場合もあります。これは放散痛(ほうさんつう)といって、感覚をつかさどる神経の分布によって、痛みの原因部分以外の場所に痛みを感じることがあるためです。
初期は動き始めや歩き始めに痛みを感じる(始動時痛)ことが多く、進行するにつれて痛みを感じる時間が長くなっていきます。さらに進行すると、安静にしている時の痛み(安静時痛)や夜に寝ている時の痛み(夜間痛)も感じ、睡眠に影響が出る場合もあります。
関節の動きが悪くなる
股関節の痛みを感じると、関節の周りの筋肉がこわばり関節の動きが悪くなっていきます。さらに靭帯や関節を包んでいる袋(関節包)などの組織が硬くなり、関節運動が制限されることを関節拘縮と言います。股関節の可動域が狭くなると、特に股関節を曲げる日常生活で支障が出てきます。
日常生活で困りやすい動作
- 足を洗う
- 足の爪を切る
- 靴下を脱ぎ履きする
- 床に座る
- 雑巾がけをする など
原因
変形性股関節症は、原因がはっきりしない加齢変化や体重増加、過負荷などによって発症する「一次性変形性股関節症」と、先天的異常や後天的な疾患に引き続き起こる「二次性変形性股関節症」があります。変形性股関節症は膝関節の変形とは異なり、先天的異常や後天的に発症する病気に続いておきる割合が高くなります。
先天的に大腿骨と骨盤の覆われている部分が少ない方(寛骨臼形成不全)や、乳児期に脱臼や寛骨臼形成不全(発育性股関節形成不全)を起こす方も、変形性股関節症を発症しやすい傾向があります。日本では変形性股関節症患者は女性に多く、これは「寛骨臼形成不全」や「発育性股関節形成不全」などが女性に多いことが影響しています。
また、比較的若い年齢でも発症し、症状を伴うことがあります。一度発症すると、静かに進行していく病気であるため、痛みや歩きにくさなど、脚の付け根に異変が現れた時はなるべく早く受診することが大切です。
変形性股関節症になりやすい人
- 重量物を持ち上げる作業が多い方
- 立ち仕事が長い方
- 肥満傾向の方
- 過度なスポーツをしている方
- 遺伝的な要因を持っている方 など
治療
治療は保存療法と手術療法があります。基本的には保存療法(薬物療法、リハビリテーション)から始めますが痛みが強く日常生活に支障が出ている場合は手術療法が考慮されます。
薬物療法
薬物療法では、変形や傷んでしまった関節を元通りにすることはできません。あくまでも痛みを楽にする対症療法ですが、苦痛を軽減させることでQOL(Quality of Life:生活の質)を向上させることができます。
リハビリテーション
痛みが強い時は安静にすることは大切ですが、動かさない時間が長くなると、関節の可動域が狭くなってしまいます。関節の動きが悪くなると、軟骨への栄養の供給がうまく行き渡らず、状態が悪化してしまいます。
痛みの状態に合わせて、関節を動かしたりストレッチを行っていきます。また、安静にしていることで筋力も低下します。筋力が低下すると、関節への負担が増え、軟骨がすり減りやすくなってしまいます。
手術療法
保存療法であまり改善効果がなく、日常生活に大きな制限が出てしまっている患者様に手術が行われる場合があります。
手術方法は大きく分けて、自分の関節を温存する方法(寛骨臼回転骨切り術)と、関節を人工物に置き換える方法(全人工股関節置換術)の二種類になります。股関節の状態や年齢、職業、生活状況など様々なことに考慮して選択します。
ご家庭でできること
変形性股関節症で大切なことは、股関節への負担を減らして、できるだけ症状を進行させないようにすることです。
日常生活での注意点
- 重い物をできるだけ持たない
- 体重の管理
- 歩くと痛い場合は杖やカートなどの歩行補助具を使う
- 踵のクッション性の良い靴を履く など
リハビリテーション
股関節周囲のストレッチや筋トレは痛みや機能の改善にとても重要です。
ストレッチをすることで股関節周囲の筋肉をリラックスさせることができます。それだけではなく、股関節の可動域の向上にもつながります。ストレッチを行う時は、あまり反動はつけずゆっくりと強い痛みが出ないように行うことが大切です。
筋トレは、最初のうちはおもりなどを使用しないで自分の体重を利用して行います。股関節周囲だけでなく体幹を鍛えることも大切です。
水中ウォーキングも効果的です。水の浮力によって関節への負荷が減るだけではなく、水の抵抗力で全身の筋肉を使うことができます。
運動療法での注意点は、痛みを我慢しないことです。運動中だけでなく、運動した翌日に疲労や痛みを感じる場合は過負荷になっている可能性があります。運動をやりすぎてしまうと、かえって症状を悪化させてしまう恐れがありますので注意しましょう。
痛みが続く場合や、日常生活で股関節の動かしにくさを感じた時は、早めに整形外科を受診してください。レントゲン撮影で異常がみられないこともありますが、リハビリテーションで状態に合わせたストレッチや筋トレの方法をお伝えします。
クリニック名 | ときわ台ときわ通りクリニック |
---|---|
住所 | 〒174-0071 東京都板橋区常盤台3-1-16 ときわ3116ビル 2階(旧 平岡ビル) |
TEL | 03-6279-8610 |