症状
頚部から肩・肩甲骨部、上肢の痛みやしびれ、だるさ、握力低下などがあります。
手指の運動障害や握力低下のある例では、手内筋が萎縮し手の甲の骨の間がへこみ、手のひらの小指側の筋肉がやせてきます。
つり革につかまる時や、物干しの時のように腕を挙げる動作で症状が出現することが多いです。
初期の場合には上肢を挙げている時のみに症状が出ますが、進行すると安静時にも症状が出ることがあります。
原因
首から腕を走行する血管や神経は、鎖骨・第一肋骨・筋肉の間で構成される胸郭出口と呼ばれる隙間を通過します。この隙間で圧迫や牽引を受けることで様々な症状が現れます。
圧迫や牽引を受ける箇所は首の横の筋肉の間や肋骨と鎖骨の間、脇の下です。
胸郭出口症候群には圧迫されることで症状が現れる「圧迫型」と、牽引されることで症状が現れる「牽引型」、両者が混在した「混在型」があり、混合型が最も多くなっています。
圧迫型
発達した筋肉により血管や神経が圧迫されて発症することがあります。筋肉質の30歳代の男性に好発する型です。
また頚肋(胎児のときに首の骨に存在している肋骨がそのまま消えずに残ったもので、人口の1%未満に生じるといわれる先天性の奇形です)による圧迫を受けて発症することもあります。
牽引型
首が長くなで肩の女性では肩や腕が下がり、神経が牽引されて発症することがあります。
20~30歳代の女性に好発します。
治療
治療の基本は保存療法ですが、圧迫型で保存療法が無効な場合には手術療法が適応となります。
生活指導
症状を悪化させるような動作や姿勢を回避します。
- 圧迫型
上肢を挙上した位置での作業を避ける、上肢を挙上しなくても行えるように環境や方法を変更します。 - 牽引型
重い荷物は、腕を引っ張り症状を悪化させます。できるだけ手で持たないようにキャリーバッグを使用したり左右の手で交互に持ったりするなど、肩に負担をかけないように工夫が必要です。
また長時間の事務作業を避け休憩を取るといったスケジュールの見直しを行います。
温熱療法
血行を促進し筋肉の疲労回復や、血管の圧迫による血流低下の改善を図ります。
ストレッチ
頚部や肩周りのストレッチ
薬物療法
消炎鎮痛剤、牽引型では斜角筋ブロック注射
手術療法
圧迫型で保存療法が無効である場合に選択されます。
・第一肋骨切除術
・前斜角筋切除術
・頚肋切除術(頚肋がある場合)
ご家庭でできること
まず、適度な休息や十分な睡眠をとって、なるべく疲労をためないようにしましょう。仕事中などに肩こりや腕のだるさを感じたら、休憩をとるようにします。首から胸、肩甲骨周りなどの筋肉のストレッチをして柔軟性を出すことも大切です。
痛みが続く場合や、何度も繰り返す場合、また軽度でもしびれや感覚が鈍くなるなどの場合は、整形外科を受診してください。レントゲン撮影で異常がみられないこともありますが、他の病気などがないかを確認するためにも、早期の受診が大切です。