
健康診断で「血糖値が高い」と指摘されたら、速やかに医療機関を受診し、再検査を受けましょう。
自覚症状がないからと放置していませんか?高血糖を放置すると、知らず知らずのうちに糖尿病へ進行し、全身の重大な合併症を引き起こすリスクが高まります。大切なのは、結果を過信せず速やかに医療機関を受診して再検査を受けることです。本記事では、健康診断の結果における血糖値の正しい見方から、受診すべき診療科、今日からできる対策までわかりやすく解説します。
健康診断で見るべき血糖値の項目と結果の正しい見方

健康診断の結果を受け取った際、「どの項目が血糖値に関連するのか」「自分の数値が何を意味するのか」迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。まずは検査結果の正しい見方と基準値を整理しておきましょう。
健康診断の結果はどこを見る?血糖値に関する主な検査項目
血液検査の項目の中で、血糖状態を評価する代表的な項目は「空腹時血糖値」と「HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)」の2つです。
健康診断で調べる「空腹時血糖値」と「HbA1c」の違い
- 空腹時血糖値
10時間以上食事を摂らずに測った血糖値で、検査前の飲食などに影響を受けやすい特徴があります。 - HbA1c
血液中の酸素を運ぶヘモグロビンとブドウ糖が結合したもので、直前の飲食の影響を受けにくく、過去2ヶ月間ほどの血糖を反映します。
糖尿病は1度の検査では診断されず、何回かの検査を組み合わせて診断されます。空腹時血糖が126mg/dL以上、食事後に測った血糖(随時血糖)が200mg/dL以上、あるいはHbA1cが6.5%以上と確認された場合、糖尿病である可能性が高くなります。特定健診では、空腹時血糖100mg/dL以上またはHbA1c 5.6%以上を血糖高値の基準としています。
食後血糖値が上昇する隠れ糖尿病(食後高血糖)
健診では基本的に「空腹時」の採血が行われますが、近年問題視されているのが「食後高血糖(スパイク)」です。 空腹時血糖値は正常(100mg/dL未満)であっても、食事をとった直後に血糖値が急激に上昇するタイプを指します。健診の通常項目だけでは見落とされやすいため、「隠れ糖尿病」と言われます。生活習慣病予防の観点からも早期のチェックが重要となります。
食後高血糖の詳しい仕組みや健康リスクについては、厚生労働省 e-ヘルスネット「食後高血糖」 でも詳しく解説されています。
なぜ血糖値が高くなるのか?高血糖の主な原因と放置するリスク

高血糖を引き起こす背景には、複数の要因が複雑に絡み合っています。血糖値が高くなる主な原因には、以下の4つがあります。
生活習慣(食生活・運動不足による血糖値への影響)
- 食生活
白米やパン、麺類などの炭水化物、あるいは清涼飲料水や菓子類に含まれる糖質を過剰に摂取すると、食後の血糖値は急激に上昇します。さらに、注意したいのがドカ食いや早食いです。一気に大量の食べ物が消化管へ運ばれると、処理が追いつかずに、血糖値が跳ね上がりやすくなります。また、欠食などの不規則な食生活は急激な血糖値の上昇を引き起こします。 - 運動不足
「筋肉」は血液中のブドウ糖を取り込んで消費してくれる重要な器官です。運動不足によって筋肉量が低下すると、ブドウ糖を取り込む「受け皿」そのものが小さくなり、ブドウ糖を処理しきれなくなります。 - アルコール
肝臓での糖代謝を乱し、食欲を高めて過食に繋がりやすくなるため、過度の飲酒は避けましょう。 - タバコ
タバコに含まれるニコチンなどの成分は、インスリンの働きを弱めることがわかっています。
加齢と遺伝的要因による血糖値の変化
年齢とともにインスリン(血糖値を下げるホルモン)の分泌機能や効きが悪くなります。また、ご家族や親族に糖尿病の方がいる場合、遺伝的な体質を受け継いでいる可能性があります。
ストレスと睡眠不足が血糖値に与える影響
精神的・肉体的ストレスや睡眠不足は、コルチゾールやアドレナリンなどのストレスホルモンを分泌させ、血糖値を上昇させます。
肥満(特に内臓脂肪型肥満)と血糖値の関係
内臓脂肪が蓄積すると、インスリンの効きを悪くする物質(悪玉アディポサイトカイン)が分泌され、インスリン抵抗性(インスリンが効きにくくなる状態)が生じます。
高血糖を放置するリスク|健康診断の結果を放置すると「糖尿病」へ
血液中の糖分が高い状態が長期間続くと、血管の内壁がダメージを受け、徐々に動脈硬化が進みます。健康診断で指摘されるような高血糖の初期段階では、痛みや違和感などの自覚症状がほとんどありません。しかし、放置して糖尿病が発症、あるいは進行すると、以下のような重大な合併症(糖尿病の三大合併症)を引き起こす原因となります。さらに、脳梗塞や心筋梗塞など、生命に関わる重大な循環器疾患のリスクも高まります。
- 糖尿病性神経障害:手足のしびれ、痛み、感覚麻痺
- 糖尿病性網膜症:視力の低下、最悪の場合は失明
- 糖尿病性腎症:腎機能低下、進行すると人工透析が必要
健康診断で「血糖値が高い」と判定されたら次にするべき行動

健康診断の総合所見欄に「再検査」「精密検査」「要治療」といった記載があった場合、具体的にどのような手順を踏むべきか解説します。
ステップ1:健康診断の結果を放置せず医療機関を予約する
まず第一に行うべきは、クリニックや病院などの医療機関への受診予約です。「来年の健診まで様子を見よう」「少し運動してから血糖値の再検査に行こう」と自己判断で先延ばしにすることは避けましょう。
受診予約のポイント
クリニックの公式サイト等で診療時間や休診日を確認し、事前に電話やWEB予約を行うとスムーズです。平日だけでなく、土曜や日曜の診察に対応している医療機関もあります。
ステップ2:受診時に必要なものを準備する
初診時には以下のものを持参しましょう。
- 健康診断の結果表(原本)
医師が詳細な数値(血圧や脂質、肝機能など他項目とのバランス)を確認するために必須です。 - 保険証(マイナ保険証)
- お薬手帳
現在服用中の薬がある場合、薬剤による影響を判断するために必要です。
医療機関で血糖値の「再検査・精密検査」を受ける
受診先のクリニックでは、健診結果をもとに改めて詳細な検査が行われます。代表的な検査を紹介します。
- 75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)
空腹時とブドウ糖液を飲んだ後の血糖値の推移を測定し、隠れ糖尿病や初期の代謝異常を精密に判定します。 - 追加の血液検査・尿検査
腎機能や脂質代謝、尿中タンパクなどを総合的に評価します。
血糖値の再検査や精密検査は「何科」を受診するべき?

健診結果を持って病院へ行く際、何科を選べばよいか迷う場合の目安は以下の通りです。
血糖値の精密検査で受診先を選ぶ目安
血糖値が高い場合に受診する科は、一般内科や糖尿病内科、あるいは内分泌代謝内科です。
一般内科(手軽に健康診断結果を相談したい場合)
身近に通いやすいクリニックがあるときや、かかりつけ医がいる場合には、まず相談してみるとよいでしょう。糖尿病についてだけではなく、生活習慣全般(高血圧や脂質異常症など)も含めて総合的に相談したい場合におすすめです。
糖尿病内科・糖尿病専門外来・内分泌代謝内科(血糖値が著しく高い場合)
健康診断の結果で「要治療」や「精密検査」と明確に指定された場合は、糖尿病専門医がいる病院やクリニックへの受診をおすすめします。特に、以下のような条件に当てはまる方は専門的な評価と治療計画が推奨されます。
- 検査数値が著しく高い場合
空腹時血糖値が126mg/dL以上、またはHbA1cが6.5%以上などの明確な高値が確認された場合。 - 専門的な治療や指導を受けたい場合
日本糖尿病学会認定の糖尿病専門医などによる専門的な評価をはじめ、一人ひとりに合わせた食事指導や薬物療法を希望される場合。
糖尿病の治療は長期的かつ継続的な取り組みが大切になります。お近くの地域のクリニックや医療センター、各種健診センターの提携医療機関など、ご自身にとって通いやすく相談しやすい医療機関を選びましょう。
健康診断に向けた日常生活での血糖値対策

医療機関での受診や診断と並行して、日頃の生活習慣を見直すことが健康診断での血糖値コントロールの基本となります。無理のない範囲で始められる具体的なポイントを紹介します。
血糖値を上げない食生活の工夫
今日から簡単に取り組める3つの食生活の工夫を紹介します。
血糖値の急上昇を防ぐ食べる順番(ベジファースト・ミートファースト)
よく知られている方法は、ベジファーストです。食事の最初に野菜、海藻、キノコ類(食物繊維)を食べ、次にたんぱく質(肉・魚)、最後に炭水化物(ご飯・パン・麺)を摂ることで、小腸での糖の吸収速度を遅らせ、食後高血糖を緩やかにする効果が期待できます。近年注目されているのがミートファーストです。牛肉の赤身肉など肉類や魚介類から先に食べることで、血糖値の急上昇が抑えられ、噛む回数が増えて満腹中枢が刺激されることで、食べ過ぎを防ぐことが期待されています。
高血糖を防ぐための具体的な食事療法のポイントは、下記の厚生労働省 e-ヘルスネット「糖尿病の食事」 を参考に日々の献立に取り入れてみてください。
血糖値を下げる適度な運動習慣
運動によってインスリンの働きが良くなり、血糖値が高くなるのを抑える効果が期待できます。
食後の血糖値上昇を抑える軽い運動
食後30分から1時間後を目安に、連続で20分以上ののウォーキングや軽いスクワットを行うと、血液中のブドウ糖が筋肉で消費され、食後高血糖を抑える効果が期待できます。
血糖値対策に役立つ有酸素運動と筋トレの組み合わせ
週3日以上のウォーキングやジョギングに加え、自重での筋力トレーニングを連続しない日程で週2~3回取り入れることで基礎代謝を高め、インスリン抵抗性を改善できると言われています。
質の高い睡眠とストレスケアによる血糖値管理
睡眠不足は自律神経やホルモンバランスを乱し、同じ食事をしても血糖値が高くなりやすくなります。また、ストレスは交感神経を優位にし、睡眠の質を下げるといわれています。就寝前に軽い柔軟運動をすると、副交感神経が優位になり、睡眠の質を高める効果が期待できます。寝室にはスマートフォンは持ち込まず、リラックスして休める環境を作りましょう。
健康診断と血糖値に関するよくある質問(FAQ)

血糖値や健康診断に関するよくある質問を紹介します。
Q. 健康診断の直前にお菓子やジュースを食べてしまいました。そのせいで血糖値が高くなった可能性はありますか?
A. はい、影響します。空腹時血糖値は直前の食事や飲料に含まれる糖質の影響をダイレクトに受けます。ただし、過去1〜2ヶ月の数値を反映する「HbA1c」も同時に高かった場合は、単なる直前の飲食だけでなく、日常的な高血糖状態が疑われます。正確な状態を調べるためにも再検査を受けることが推奨されます。
Q. 血糖値が「少し高い(正常高値)」くらいなら、病院に行かなくても大丈夫ですか?
A. 健康診断で指摘された段階で放置せず、予防の段階で相談することをおすすめします。「境界型(糖尿病予備群)」と呼ばれる段階から動脈硬化が進むリスクがあることが知られています。早期に対策を行うことで、将来的な糖尿病発症を遅らせる、あるいは防ぐことが期待できます。
Q. 再検査の料金や費用はどのくらいかかりますか?
A. 健康診断で異常を指摘された後の再検査や精密検査は、基本的に公的医療保険(3割負担等)の適用対象となります。検査内容(血液検査やOGTTなど)や処方されるお薬の有無によって異なりますが、初診料を含めて数千円程度(約2,000円〜6,000円前後)が一般的な目安となります。
まとめ|健康診断の血糖値をきっかけに早期受診と生活習慣の見直しを

健康診断で「血糖値が高い」と指摘されると不安になるかもしれませんが、見方を変えれば「自分の身体からの重要なサインにいち早く気づけたチャンス」でもあります。高血糖は自覚症状がないまま進行するため、「まだ痛くないから」「元気だから」と受診を先延ばしにすることは危険です。まずは健診結果表を用意し、お近くのクリニックや糖尿病内科の予約をしましょう。
専門医の適切な指導のもと、検査を受け、食事や運動などの生活習慣を少しずつ見直していくことが、将来の重大な病気を防ぎ、健やかな毎日を守る第一歩となります。



